底なし宝箱

[top]   [story]   [short story]   [present]   [diary]   [offline]   [links]   [bbs]

| [トップページ] | [濱霧 緑炎さんトップ] |

Mission 11

――6年前 ニューコム ペトロル実験航空基地 集中治療室――

床も壁も天井も真っ白い部屋の中央に置かれたベットに、茶髪の少年が横たわっていた
目は開かれていたが、どこを見ているのかはわからず、淀んだ瞳だけが開かれて、ただ天井の方を向いていた

「被験者・・・・クリスの容態はどうだ?」

別の部屋で、モニターに映し出されているクリスの病室を見ていたニューコムの士官が、横にいる白衣の男に尋ねた

「容態は決して良くはありません・・・・・・・・・回復の見込みは低いでしょう」

白衣の男は、士官と同じようにモニターに視線を固定したまま答えた

「何故こんなコトが起こったんだ?」
「スフィアから膨大な量の戦闘情報が強制的に、しかも直接脳内に送り込まれたんです、今は安定していますが、下手をしたら脳死や精神崩壊の恐れも・・・・」
「それは知っている、私は原因を聞いているんだ」
「・・・・ディジョンの亡霊」

白衣の男が呟いた

「もしかしたら、ディジョンの亡霊がコトを起こしたのかも知れませんね―――」

――ファーバンティ デニス空港 ブリーフィングルーム 午後9時00分――

「――――よって、我々はUPEO航空部隊は、三企業の戦闘機隊と2機づつのペアを組んでパトロール任務に就くことになった」

演壇の上でマイクに向かって喋っているのは、ファーバンティに駐留しているUPEO部隊の司令官だ

「各部隊のパイロットはコフィンに搭乗後、それぞれの企業のパイロットとコンタクトを取り、それぞれの打ち合わせを済ませておくように――質問はないな」

誰一人として、手を挙げる物はいなかった

「よろしい――解散」

その一声で、その場にいたパイロット達は格納庫へと歩き出していった

――ファーバンティ東側沿岸部上空 11月30日 午後10時00分――

月明かりが、ファーバンティの海岸線を照らしていた
普段ならば都市の光によって遮られているそれは、停電した沿岸部の町並みを静かに照らしていた
その月明かりの中を、2機の戦闘機が飛行していた、SARFの文字が刻まれたYF-23Uと、真紅に染め上げられたデルフィナス#4だ

『で・・そのカメラマンがさぁ』

紅いデルフィナスのパイロット、雪花とYF-23Uのパイロット、クリスは、任務中にもかかわらず堂々とオープン回線で会話を交わしていた

「まぁ、たしかにな・・・」

クリスはそう言いながら、"この編成を誰が考えた?"と言うコトと、6年前の事故を思い出していた

『・・・・・もしもーし?』

雪花の声がスピーカーから聞こえた
同時に、レーダーに赤い点が灯って、アラートがコフィンの中に響く

「来たか・・・・・」
『識別信号には反応なし・・・・まさか・・敵?』

雪花の呟きの途中で、HUDに未確認機が攻撃態勢に入ったと表示が出た

「司令部へ、こちらSARF06、東部沿岸で未確認機を捕捉、未確認機には攻撃の意志があると思われる」
『了解した、未確認機と接触して所属を確認せよ』
「了解」

クリスはそう言うと、グレイゴーストを紅い光点の方向に向けた、少し遅れて雪花も同じように旋回する
旋回を終えてからクリスは、先ほど自分が言ったことに気づいた

「なんで・・・敵が来るってわかったんだ・・?」

その呟きは、ミサイル接近のアラートにかき消された

《Warning! Missile alert!!》
「わかってるっての!!」

雪花はアラートに向かって怒りながら、デルフィナス#4を旋回させていた
その背後を、2発のミサイルが正確に追尾する
雪花は攪乱材のスイッチを入れると、デルフィナスを垂直に降下させた
背後でミサイルの爆発音が聞こえ、その後ろに、ミサイルを放った敵機が見えた
機首を起こして、大通りの上を凄まじいスピードで海に向かって飛び始めながら、雪花は辺りを見回してクリスと敵機の位置を確認した
その途中で、すぐ側を機銃弾がかすめた
一気に加速して海上に出ると、足枷となっていた増加タンクを切り離した
その間にも、敵は容赦ない攻撃を仕掛けてくる

「まだまだ・・・・・」

誰とも無く呟くと、デルフィナスを海上の廃墟へと向けた
再びアラートが鳴り響いて、今度はミサイルが飛んできた
それを大きな宙返りで交わすと、短距離ミサイルを3発連射して、更に機銃で追い打ちを掛けた
敵はその攻撃を巧みに交わすと、再び雪花のバックをとるために急旋回した

「よぉし・・・・」

雪花の口から、そんな言葉が漏れる
余裕が見える言葉とは裏腹に、敵機は雪花のバックをしっかりと抑えていた
デルフィナスを上昇させると、更にスピードを限界まで押し上げた
そして、高度が10000を越えると、雪花はデルフィナスを反転させて、敵機のすぐ側をすり抜けた

「なっ?!」

敵機のパイロットがそう言うのと、クリスのグレイゴーストが月をバックに視界に入ったのは、ほぼ同時だった
敵機は機体をロールさせようとしたが、間に合わずにクリスの銃撃を尾翼に浴びた

「当たったか?!」
『ダメ、尾翼吹き飛ばしたけどピンピンしてる』

クリスの短い問いに、雪花の短い答え
その間にも、敵機は体勢を直してクリスに襲いかかろうとしていた
クリスはそれを横転して交わすと、素早く敵の背後を取って今度はミサイルを発射した
敵機はそれを巧みに交わすと、加速してクリスのバックを取ろうとした
クリスの機も加速して一旦敵との距離を取ると、全速のまま旋回に入った

「ぐっ・・・・・・・・」

ロックオンと耐久度のアラートが気になったが、それを無視して旋回から宙返りに移る
敵機はその後ろ、ロックオン出来るか否かの微妙な距離で追尾していた
不意に、クリスの機体が大きく減速しながら機首をあげて迫ってきた
"コブラ"でバックを取り返すと、クリスはミサイルを発射しようとした――がレーダーに灯った光点と当時に流れた無線で、そんな状況は終わりを告げた

『現在交戦中の清流公社機に次ぐ、こちらはUPEO所属SARFだ、貴機の行動は条約を逸脱している、直ちに戦闘行動を中止し、我々の誘導に従い着陸せよ』

エリックの声がコフィンに響いて、視界にはSARFの面々と3企業の戦闘機隊が数機見えた

『SARFへ、了解した』

敵機のパイロットはそれだけ答えると、翼を翻して空港の方に進路を変えた
2機のUPEO機が、そのバックにつく
そして、クリスの真横にエリックが近寄ってきた

「よくやったな、クリス・・・・・と、飛鳥井少尉も」
「それほどでも無いですよ」
「あ・・ありがとうございます」

それぞれ返事が返ってくる、前者は普通に彼と話すときと同じように敬語で、後者は今までの人生の内に滅多に使うことのない敬語でやがて、3機は空港の方に機首を向けた

滑走路に黒い戦闘機が着陸して、そのコフィンからパイロットが降りてくると同時に、待機していたUPEOのMPが、そして黒いスーツの男、UPEOのアーノルド代表と会話して、先ほどこのパイロット――ディジョンと会話していた男は、さっとパイロットに近寄っていった

MPはディジョンの前後左右に、男はディジョンの左隣について、空港の施設に向かって歩き出した



「どうだった、目標は確保できたか?」



男は、視線も顔の向きも変えずに、ディジョンだけに聞こえるような小声で問いかけてきた



「ああ、しっかりと防空網の穴を見つけて置いた・・・・・・それと、予想外の収穫もあった」



ディジョンも、同じような小声で言った



「予想外の収穫?」

「ああ・・・・・あの2人のパイロットのコトだ」



ディジョンは、言葉を切った

「面白くなりそうだ・・・・」

濱霧 緑炎さん
01.20.AM 更新