底なし宝箱

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Mission 12

――UPEO  スコフィールド空軍基地  クリス・フォッケウルフ私室  12月2日  午前11時30分――

「共同作戦・・・ですか?」
『そうだ』

ホロ・ディスプレイのエリックは、そう言って頷いて見せた

『この前作戦の後、ニューコム側が協定に違反する規模の空母機動艦隊をニュー・メガフロートに集結させた、そこで、オレ達と清流公社と共同で部隊を組んで、攻撃につくことになった』
「清流公社、とですか・・・・・・」
『ああ・・・・・・・・・・正確には、ケインとクレッグを墜としたヤツのチームとな』
「・・・・・・・・・・なんで、ですか」

クリスはそう言い放った

「なんで、ついこの前まで敵だった奴らとチーム組まなきゃならないんですか」
『お前はまだUPEOに来たばっかだからわかんないだろうけど・・・・・・・UPEOではそれが普通なんだよ』
「――――仲間を撃墜した奴とチーム組むのが普通なんですか?」

そう言って、クリスは一方的にネットフォンの回線を閉じた

エリックはネットフォンを着られた後も、イスに腰掛けたままだった
そのままぐるりと回転すると、壁にメッセージボードに貼り付けている昔の写真、初代SARFの写真を見つめた
「あの時のオレと一緒か・・・・・」
14年前、あの戦いの中での出来事を思い出しながら、エリックはそう呟いた

――S.S.S.カランダビーチ航空基地  ブリーフィングルーム  12月5日  午前3時00分――

海岸線沿いをクロスするようにに作られた滑走路を中心に、清流公社防衛部隊S.S.S.のカランダビーチ航空基地は作られていた
その基地の、ちょうど滑走路と海岸が見渡せる場所に、SARFのメンバーと清流公社の合同チームに割り当てられたブリーフィングルームが有った
と言っても、肝心のブリーフィングは既に終了していて、その部屋にいるのはクリスだけであった
クリスの前には歴史の教科書とノート、そして紙コップが置かれていて、持ち主は宿題の答えを教科書で調べながらノートに書き込んでいた

その部屋に、ノックの音が響いた
クリスが顔を上げると同時に、圧縮空気の音と共にドアが横にスライドして開いて、S.S.S.航空部隊の記章がついたパイロットスーツを来た男が入ってきた

「初めまして、クリス・フォッケウルフ君」

そう言って、そのパイロットはクリスの向かい側の席に腰掛けた
その男のコトを、クリスは良く知っていた
名前はジーン・ランジェット、階級はエリック隊長と同じ航空少佐
前の作戦の才にファーバンティ上空で戦い、そして、クレッグとケインを撃墜した清流公社のエースパイロットだ

「キミの噂はこっち[清流公社]でも聞いているよ、史上最年少のパイロットだってね」
「・・・・・・何が言いたいんですか?」
「イヤ・・・・・これが"新しい世代"か・・・と思ってね」

ジーンは、独り言のようにそう呟いた

「実のところを言うと・・・まだ信じられなかったんだよ、キミが、あの時のパイロットと言うコトがね」

それを聞いて、クリスの目が僅かに細くなった

「・・・・どこまで出来るか・・・この作戦で、キミの実力を見せてもらうとするよ、坊や」
「坊やはよけいだ・・・・・けど、望むところですよ」

クリスはそう言うとほぼ同時に、アナウンスが作戦要員の集合を伝えた

――カランダビーチ沖合  ニューコム海上移動都市"ニュー・メガフロート" 午前4時30分――

ニュー・メガフロート
アクアパレス、そしてそしてかつてのクーデターで沈没したメガフロートに次ぐニューコムの海洋都市だ
規模は約2倍、港の数も4つに拡張されていて、人口も2万3000人を数える都市だ
そして、この港には条約に反する規模のニューコム主力艦隊が今も尚展開していた

『攻撃隊全機へ、間もなくニュー・メガフロートの防空圏内に突入する、編隊を組み直し、攻撃態勢をとれ』

空中司令機からの命令に対して、各編隊からの『了解』のコール
そして、後続の清流公社の編隊が、さっと散開していく

『マイクとクリスは上空制圧、クレアとオレで敵を牽制するぞ』

クリスは「了解」と短く答えると、増速しながら上昇し始めた
すぐ隣をマイクが同じように上昇する

『なぁ・・お前、何か最近変じゃないか?』
「そうか?」
『ああ、この前の作戦の時からな・・・・・・・何かあったのか?』
「別に・・何もないけど?」
『そうか・・・・ならいいけどよ』

その声と同時に、HUDに敵が映し出される

「よっしゃ・・・おいでなさったな」

クリスがそう呟くと同時に、ロックオンのアラートがコフィンに鳴り響く
2人は左右に散開してミサイルを交わすと、それぞれミサイルを発射した

《Bingo!》

HUDの表示と共に、レーダー上の残った敵が、クリスに向かって動き出した

「全部で4機か・・・何とかなるな」

誰とも無く呟くと同時に、ニューコム機が視界に入った
4機とも見たことのないカタチの新型機だった
ガンカメラがその機影を捕らえると共に、HUDの半分が衛星からのデータで覆われた

《R-113  シュワルベ  ニューコム艦上制空戦闘機》

次の瞬間、HUDのデータ欄が砂嵐に覆われた
一瞬だけ、砂嵐の中に外部アクセス中の文字が浮かび上がる

「なんだ・・・・・?」

そう呟き終わらない内に砂嵐は収まって、HUDは正常な状態に戻った

『気をつけろ、新型だぞ』
「大丈夫、全部潰す」
『お前・・・やっぱり性格変わってるぞ』

マイクのその言葉を聞き流しながら、クリスはYF-23Uを旋回させて、4機のニューコム機のバックを取った
ロックオンの心地よい音と共に、ミサイルを立て続けに4発発射する
その間に全速で敵機との間合いを詰めると、ミサイルを回避しようとしていた敵に向かって、機銃を連射した
一機がズタボロになって海面に叩き付けられると同時に、残った3機が反撃を始めた
2機が上、1機が下に散開してクリスを挟み撃ちにする
機首を下げて、向かってきた敵にミサイルを撃って、そのまま勢いよく上昇
背後で爆発音が響いて、レーダーの光点が一つ消えたのが見えた

「なかなかやるな・・・・さすがは"天才少年"か・・」
コフィンの中でジーンはそう呟くと、HUDの視線をクリスの方から正面へと戻した
そのまま一気に高度を下げて、ニュー・メガフロートのドックへと機首を向けた
同時に、激しい機銃弾の嵐がジーンを襲う
彼はそれを交わすと、前方の空母に向けて3発の爆弾を投下した
爆弾は真っ直ぐ空母に向かって落ちていって、飛行甲板の戦闘機に命中した
回りの機体を巻き込んで爆発が起こって、次々と甲板上の弾薬や航空燃料が誘爆していく

「火を消せ!消火だ!」
「ダメージコントロール急げ!」
「早くしろ!燃料に引火するぞ!」

甲板の上でクルーが必死で消火に当たっていたが、炎は止まるどころかますますその勢いを増していた
甲板下の燃料タンクに火が回ったのか、空母は黒い煙を吐き出して、ニューコム独特の双胴船体が大きく左に傾き始めた

『総員退艦!退艦!』

爆発音に混ざって、その命令がスピーカーから流れ出す
その声をかき消し、再び爆音が響いて、左側の機関区から炎が吹き上がる
甲板の戦闘機が燃えながら海に滑り落ちていって、生き残ったクルー達も次々と海に飛び込んでいった
そこに、再び爆弾が投下されて、更なる爆発が空母を包み込む
そのすぐ上を、黒い機体、クリスのYF-23Uがかすめて、勢いよく上昇していく
その姿を、ジーンはコフィンの中で見上げていた

「きれいだな・・」

どこか場違いなコトを、クリスはコフィンの中で呟いた
その視線の先には、白い太陽の光が、水平線上から顔を出そうとしているのが見えた
空が、急速に光を取り戻しつつある中、UPEO司令部からの通信が届いた

『現在作戦遂行中の全機に次ぐ、アーノルド代表の停戦交渉よって、三企業の間に一時停戦協定が結ばれた、直ちに攻撃を中止し、帰投せよ』

無線の声を聞いて、清流公社とSARFの合同チームは編隊を組んで、基地の方向へと機首を向けた

『クリス・フォッケウルフ』

唐突に、ジーンから通信が入った

『キミは、この世界で"何かを変えたい"と思ったコトがあるか?』

返答に戸惑っているクリスを置いて、ジーンは淡々と話し始めた

『もしも、本当にキミが何かをしたいと思うのなら、このまま、私について清流公社へ来い』

ジーンの口からその言葉が発せられた瞬間、その通信を聞いていた全員の顔に緊張と戸惑いの表情が浮かんだ

『あの男・・・ナニ考えてるんだ、クリス!あんな誘いに乗るなよ』
『ランジェット少佐!何をしている!直ちに帰投せよ!』

ジーンは回りを無視して、再びクリスに話しかけた

『さぁ・・・・どうする?、SARFのエース』
「・・・・・・・・・」

長い沈黙の後、クリスは口を開いた

「断る、オレはSARFのメンバーだからな」
『そうか・・・・残念だよ』

ジーンはそう言うと、機体を旋回させて、清流公社の編隊に戻っていった
残されたクリスは、SARFの編隊に合流すると、大きく息を吐いた
そのまま、SARFのメンバーは旋回して、自分たちの空母の方向へと機首を向けた

――カランダビーチ沖合  UPEO第一機動艦隊旗艦  空母ガブリエル=W・クラークソン  クリス・フォッケウルフ部屋  午前7時45分――

『お前の判断は正しかったと思う』

エリックからのメールは、その言葉から始まっていた

『今、こんな状況の中で、しかも、俺達[SARF]からパイロットを引き抜こうとするなんて、まず普通じゃ考えられない―――これはオレのカンだが、あの男、ジーン・ランジェットには気をつけた方がいいと思う』

エリックはそう言って、少しの間考え込むように黙った

『もしかしたら・・・・』

そう呟き掛けて、首を横に振った

『何でもない・・・忘れてくれ』

メールは、その声同時に終わった

エリックはメールを送り終わった後も、少しの間イスに腰掛けていたが、やがて、何かを思いついたのか、マウスを操作して自分のアドレス帳を開いた
そこには、メールアドレスとその持ち主であろう人物の名前、"Y.Hokuma"の文字があった

「・・・・・・まさか・・考えすぎだよな・・・」

そう言って、エレックはアドレス帳を閉じた

「あの男が言ったコトがディジョンに似ているからって・・・・・・・まさかよみがえったなんてコト、あるわけないよな・・・・」

濱霧 緑炎さん
01.20.AM 更新