底なし宝箱

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Mission 21.5 (1)

ウロボロスの旗艦、スフィルナは海上に静かに浮かんでいた。 墜落の衝撃で気を失ったスフィルナの搭乗員は意識を取り戻した後、何が起こったのか理解できずに混乱していた。

「うう・・・・・・一体何が起こったというんだ。」
「突然コントロールが効かなくなったと思ったら墜落だ。」
「同志ディジョンはどうしたんだ!?」
「現段階では全く状況の把握ができません!」

幸い艦と艦載機の損傷はなかったため、スフィルナの指揮所のコンソールを彼らは操作して艦の機能の復旧作業を試みたものの、全く反応がなかった。
ユウによってスフィルナの機能は完全に停止していた。
ウロボロスの旗艦であるスフィルナと革命の指導者であるディジョンを事実上失ったことにより、ウロボロスはこのまま崩壊するはずだった。

「我々の革命はここで終わるというのか・・・・・・。まだ何もしていないというのに。」

一人がそうつぶやいたとき、いきなり艦の機能が回復した後スピーカーから声が流れてきた。

『終わりなどしない。』
「同志ディジョン!?発信源はどこからだ?」
「この艦に搭載されている機体、ジオペリアからです!」
「!、同志ディジョン!無事だったのですね!でもどうして・・・・・・。」
『これは私がサブリメーションされた存在だからこそ可能なことだ。私は自分にもしものことがあった時のために、ジオペリアに私の記憶をオリジナルとして移 しておき、かわりにコピーを活動させておいたのだ。そしてコピーが死を迎えたときには、ジオペリアの中のオリジナルが覚醒するようにセットしておいたの だ。』
「そ、そんなことが・・・・・・」

その後ディジョンは自分の能力によってスフィルナを再起動させた後、HUDを通じて、集結してきた部下たちに、そして世界中に対し演説をした。

『諸君、これからが始まりなのだ!今や過去の栄光にしがみつく老いぼれたゼネラルリソースと、科学の知識的欲求と己の富を満たすためには手段を選ばぬ ニューコムは、この世界の覇権を握るために全面戦争に突入した!!我々はこの両社の衝突を利用して革命を成功させる!我々は問う!今までの人の歴史はなん だったのかと!!欲望によって創られてきた歴史!!例えるなら権力欲!性欲!独占欲!人の欲望は挙げればきりがない!!腐敗しきった文明を精算し、新たな 未来を創り直すのを我々は行わねばならんのだ!!そしてこの革命の後、人々は知るであろう!新たな可能性を持った世界を!!!』

ディジョンの声には既に狂気がにじみ出でいた。そして最後に更に大きな声で、

『今こそウロボロスの蛇は自らくわえたその尾を放し、かま首をもたげる時なのだ!!!!!』
『ウォーーーー!ウロボロス万歳ーー!!』
『腐った世界に死を!!』
『USEAを我々の手に!』

熱狂するウロボロス兵達、そしてスフィルナの内部にある戦闘情報センターの中で、エレクトロスフィアから演説するディジョンの姿を見て絶叫のような喚声をあげるスフィルナの搭乗員。
その中でフィーの姉、シンシア・ブリジット・フィッツジェラルドはこうつぶやいた。

「違う・・・こんなことが私の望んでいた理想じゃない・・・・・・。」

その後シンシアはディジョンに訴えていた。自分の理想が正しいものだと証明するために。

「この世界を変えるのは、この様な戦いではなく、ディジョン、あなた自身の姿であり、人々のサブリメーションではないのですか!?私がニューコムから持ってきたジオペリアなど使わなくとも、あなたが自らの手で人々にエレクトロスフィアの素晴らしさを説くべきです。」
『いや違うな。力とは人に見せるためにある。今のお前に私の姿が見えるか!』
「いいえ、でも肉体として見える姿に意味なんてあるのですか?」
『今のお前に何が解る!何も知らずにこの世界に縛られ、一瞬にして全てを失った者の気持ち。この私が、この姿を望んだとでも思っているのか!?』
「サブリメーションを望んでいなかった!?・・・・・・私が・・・私がニューコムを裏切り、たった一人の妹までも裏切り、全てを捨ててまで参加した、このあなたの革命に・・・・・・。私が望んでいるのは、あなたの、その姿でした!!」
『フ・・・・・・笑わせるな!お前の言っているのはまるでエレクトロスフィアが天国だとでも言いたいようだな。』
「フィーはこんな私にいつも言ってた・・・・・・。夢を見るなら眠ってる時だけにしろと。でも、あなたのおかげで、今わかった・・・・・・。」

ウロボロスは彼女の求める理想の組織などではなかったのだ。

「同志ディジョン、報告します。先程UPEOのパークからNUN本部近辺の軍港に停泊していた機動艦隊を我々の決起に参加させることに成功。既に南下を 行っており、まもなくポート・エドワーズに着く予定です。また我々に賛同したゼネラル、ニューコム両社の機動艦隊も合流します。これによって後は命令さえ 出せば、艦隊の上陸部隊によっていつでもゼネラルリソースとニューコムの本社を制圧する事が可能です。」
『肝心のパークはどうしている?』
「現在、潜航中の核融合力潜水艦で艦隊の指揮をとっています。」
『あいつらしいやり方だな。よし、作戦の開始を伝えろ。あと私もジオペリアで出る、出撃準備を開始しろ。』
「はっ!了解しました。」

スフィルナの中でも重要な格納庫エリア、そこに9機のジオペリアの姿があった。
その内の1機はディジョン専用としてか黒紫に塗装してあった。

”XR-900”『ジオペリア』。

ナイトレーベン研究者がニューコム移籍後に開発した機体。
現段階では実験用のためにコフィンがあるが、最終的にはAIによる無人戦闘機を目指している。
名称は平和の象徴「むくろ鳩」を意味する。
シンシアはウロボロスに参加する際にジオペリアにハッキングを行い完成していた9機全機を奪取していた。
そしてディジョンはこの機体の無人化に注目し、自分とシンクロさせることで9機全機を自由自在に操ることが可能となっていた。

『ジオペリア発進準備OK!』
『発進!!!待っているがいい、レナ。そしてSARFのエース。』

スフィルナのハンガーの扉がゆっくりと開き、そこから一斉にディジョンの操る9機のジオペリアが飛び立っていった。
そしてディジョンに率いられて、ウロボロスの部隊が後についていった。
その中にはシンシアもいたが、彼女の中ではある決心が固まりつつあった。
そして眼下にはUPEO、ゼネラル、ニューコムの艦隊が終結しつつあった・・・・・・。

「異常者が・・・・・・。」

パークは潜水艦の指令所でディジョンの演説を見て一人つぶやいていた。

「まあいい・・・・・・。早く革命とやらで、USEAを焼き尽くせ。そしてゼネラルとニューコムの焼け野原に立つのは・・・・・・・・・この私だ。」

「どういう事だ!?クーデター組織と合流するなんて。俺達の任務はポート・エドワーズのゼネラル本社の護衛及び、増援じゃなかったのか!?なのに何故上陸部隊まで用意する必要がある?どう考えても異常だ!」

ゼネラルのパイロット、キース・ブライアンは艦隊司令官に異を唱えていた。

「我々は以前から彼等、即ちアビサル・ディジョンの計画に賛同していたのだ。今回の増援もゼネラル、ニューコムの中枢の占拠が本当の目的なのだよ。」

艦隊司令官は冷静に答えた。
キースは返す言葉がなかった。

「畜生・・・畜生・・・、何がどうなっているんだ?」

空母の甲板でしばらく考え込んだかと思うと、キースは突然ゼネラルの最新鋭戦闘機ゲイムに乗り込み、コフィンを通じてカタパルトを無理矢理作動させ飛び立った。

『司令官!キースが勝手に飛び立ちました!!恐らくコフィンを通じてカタパルトに無理矢理アクセスした結果、作動したようです。』
「なんだと!?すぐに追撃部隊を編成してやつを撃ち落とせ!!」

艦隊が大慌てしている一方、

「あれは、俺の知っている、俺の相棒だった、ゼネラルのエースだった・・・俺の親友だった・・・別人だ。奴はもう、どこかで死んだ・・・・・・・・・・・・。だから、俺は、奴の名を騙るあいつを・・・・・・・・・、必ずこの手で、この世から、消す。」

そう心に誓ったキースだった・・・・・・。

生江 晋士さん
01.20.AM 更新