底なし宝箱

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Mission 26.5

ユウ達はとうとうUPEO本部にある自分達の寮に戻ってきた。 しかしこうなるまでには長い時間がかかった。 実際ベリーズに迎えが来た後ユウ達は直接本部への出頭を命じられた。 理由はもちろん今回の事での事情聴取である。 特にフィーの事ではさんざん質問された。 他にもUPEOが回収したナイトレーベンとジオペリアの事もある。(ナイトレーベンに仕掛けられている爆弾は回収後に取り外された) それにレナのシルバーストーン病のこともあった。 彼女の身体の事も考慮しなければならない。 ところが検査の結果にはさすがのユウも驚かされた。 なんと彼女の病気は完治している状態だったというのだ。 何度も検査してみたが結果は同じだった。 試しにレナに昼間外を歩かせてみてもなんの異常も起きなかった。 医者の話によると、 「ニューコムのナノバイト研究所での事故による、暴走ナノバイトの駆除作業の際にレナさんはナノバイトに侵食されてしまいましたよね・・・・・・。恐らく それが原因でしょう。たぶんANBによって中和されたナノバイトが少しずつ時間をかけて彼女の肉体と融合、そしてシルバーストーン病を治していったと考え られるでしょうね。無茶苦茶とも言えますが、実際ニューコムのナノバイト技術は病気の治療用としても利用できる未知の可能性を秘めているのですよ。とにか くこのようなケースは前例がないためなんとも言えないのが現状です。」 このためユウ達が解放されたのは10日後の昼すぎだった。

この日の夜。 レナは自分の部屋で、鏡を使って自分のうなじを見ていた。 オプトニュートロンはなくなっている。 検査の時に自然にスルリと抜け落ちてしまった。 医者が調べてみるとそこにはもう手術の跡さえなくなっており、念のためにレントゲン検査で調べてみても体内にもその痕跡はなかった。 ナノバイトの副作用からか、始めからそこには何もなかったようになっていた。 これの取り外しは本来できないものだった。 この場合、シルバーストーン病が完治したことを喜ぶべきかもしれないが、レナは素直に喜べない。

「ナイトレーベン・・・もう乗れないのかな・・・・・・。」

レナにとって生きる意味と同じぐらい大切なもの「だった」。
ナイトレーベンはオプトニュートロンの手術を受けた人間のみが操縦できる。
だがレナにはもうそれがない。
考え込んでいる中、通信が入る。
ウィンドウにユウの姿が映る。

「レナ、起きてるか?」
『ユウ、どうしたの?こんな夜に。』
「これから特殊な機体のテスト飛行をやるんだ、レナも来てほしい。それにこの時のフライトで見せたいもののある。」
『かまわないけど、特殊な機体って?』
「ハンガーに来ればわかる。じゃあ待ってるから。」

そう言い終えるとユウからのコールは切れた。
レナは少し変に思いながらもハンガーに向かう。
そしてそこにあるものを見て絶句した。

「ナイトレーベンとジオペリア・・・・・・。」
「レナ!」

ユウがジオペリアの近くで手を振っている。

「ユウ!じゃあ特殊な機体ってこれ?でもナイトレーベンはオプトニュートロンがないと・・・・・・。」

「その点なら心配ない。回収した後ジオペリアとナイトレーベンにはUPEOが開発した新型コフィンが搭載されている。計算上ではオプトニュートロン並に高度な操縦が可能らしい。俺達が呼ばれたのはこの2機の飛行データの収集と新型コフィンのテストのためなんだ。」
「そうだったの・・・。じゃあ見せたいものって?」
「それは飛んでる時に目的の場所に誘導するからついて来てくれ。」

レナはナイトレーベンに、ユウはジオペリアに乗り込み発進準備を行う。
2機の戦闘機が静かに基地の滑走路から飛び立っていく。
ユウはこれまでにこれに二度乗ったことがある。
一度目は8機のAIによる無人のジオペリアとの戦いで、二度目はディジョンが操る9機との戦いでだ。
しかし正確にはハッキングしてその機の操縦系統をのっとったという方が正しいが。
一通りのテスト飛行を終えた後、ユウはレナについてくるようにと合図を送る。
レナもそれに従い、2機はドンドン高度を上げていった。
高度32000、眼下のエキスポ・シティが小さく見える。
本来ここまでの高度に達すると高度の維持のための細かいコントロールが利かなくなるはずだが、ジオペリアとナイトレーベンの能力はそれを可能としていた。

「ついた。レナ、上を見てみるんだ。」
『上?・・・・・・ああっ・・・!』

レナは言葉を失った。
そこには満天の星空が広がっていた。
今の地球からでは滅多に満天の星空を見ることはできない。
地上の光によって星空の輝きはかき消されてしまっていた。
しかしここまでの高度に達すれば星の光を見ることができた。

『きれい・・・・・・。』

星のあまりの美しさにレナはうっとりしていた。
これまで彼女はシルバーストーン病によって昼は歩けなかったため、夜の間だけ普段着で自由にできる散歩が好きだった。
そのうちに夜見える星空をみるのが彼女の日課となった。
しかしなかなか見れるものではなく、せいぜいぽつり、ぽつりと輝く星を見れればいい方である。

「レナ、前に言ってたよな。『星を目指す力・・・・おおきい・・・・。』って。だからこの星空をお前に見せてやろうと思ったんだ。」
『・・・ありがとう、ユウ・・・・・・。』

二人はそのまましばらく高度を維持したまま飛んでいた。


レナの部屋に朝日が差し込む。
窓にはめ込まれている太陽光をさえぎるための窓と同じサイズの写真はもう外されている。
もう彼女には必要ないものだから・・・・・・。

AM5:32

ベッドの横にある時計はまだ明け方を指していた。
久しぶりに戻ってきた部屋での早い朝。
特に変わりはない。
ただ隣りで静かに寝息をたえっている彼以外は・・・・・・。
あの後、レナはユウに自分の部屋まで送ってもらった。
そして、自分の部屋に戻ろうとするユウを無理やりに引き止めたのだ。
困るユウに、

「お願い。一緒にいて。」

と無理に頼み込み、一つのベッドで寝てもらった。
今ユウはとなりで静かに寝息をたてながら熟睡していた。
昨日の夜、あのフライトの後にこの部屋で、自分をあれほど激しく愛してくれた面影は、今はまるで子供のように様変わりしていた。
とてもあの激しい戦いを潜り抜けてきたとは思えない程の寝顔。
愛しくてたまらない・・・というような表情でレナはユウにキスをした。

(ずっとこうしていたい・・・・・・・・・。)

そう思ってしまう瞬間。
思い出してみれば、彼はいつでも自分に優しかった。
いつでも彼は自分を守ってくれた。
それがまるで自分の使命だとでも言わんばかりに。
あの時・・・ユウが部屋で倒れていたのを見つけた時、これ程にない不安と絶望に駆られた。
レナは必死の思いでユウの無事を求めて祈った。
そして彼が助かった時、自分の中にその時は理解できなかった思いに気がついた。
自分はその時、いや彼に会った時から惹かれていたのだと・・・・・・。

(ユウのおかげで私は笑えている。上手に笑えている。)

「 ・ ・ ・ う ・ ・ ・ ん ? ・ ・ ・ ・ レ ナ ・ ・ ・」

ユウが目を覚ます。
そして優しく笑いかける。
レナも同じように優しく微笑む。

「おはよう・・・・・・ユウ・・・。」

彼女の笑顔はこれまでにないほど、綺麗で、優しく、そして美しかった。

生江 晋士さん
01.20.AM 更新