底なし宝箱

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Mission 7

雪花は見慣れたコフィンのHUDに表示されているデータを全て見終わると、デルフィナスをカタパルトの位置まで前進させた カシャンッ、という音と震動と共に前輪にフックが掛けられ、発進の準備が進められる カタパルトを点検していたフライトクルーの一人が、雪花に向かって親指を突き上げてきた、異常なしを意味するサイン、昔から空母のクルーが続けてきた行為だ 雪花は同じサインをクルーに返すと、半開きになっていたコフィンを閉じた

「GO!」

クルーのその声と同時に、デルフィナスは勢いよく空中に発射された
雪花はほとんど垂直に下降して、高度が3000を切ったところで上昇を始めた
そして、頭上に見えている空中空母を見た
大型空中空母"カルネアデス"、全長600メートルを誇るこの空中空母は、スフィルナに次ぐ現在のニューコムの空の守りだ
選ばれた物しか助けることのないカルネアデスの板、その話がこの艦の名前の由来だということは雪花も知っていた
そんなコトを考えながらデルフィナスを上昇させて、カルネアデスと併走し始めた

『カルネアデスより護衛機編隊へ、間もなくゼネラル・リソースの制空権に入ります』

ブリッジから通信が入った、雪花は深呼吸すると、辺りを見回し始めた
辺り一面森林しか見えなかった、この先にはGRDFのイスタス要塞があるはずだ、カネネアデスはその方向に進んでいた

この日、ニューコムはアクアパレスの報復を名目にユージア大陸の南部に位置するゼネラルのイスタス要塞に攻撃をけしかけるために"カルネアデス"をコモナ諸島から北上させていた
50年も前の戦争の時に作られたこの基地は、険しい山岳地帯の山頂に作られた空軍基地を中核に、それぞれの山頂に作られた防空レーダー施設、山の間の峡谷 地帯に流れている川を利用した補給基地と潜水艦ドック、そして台地の窪地に作られたVTOL戦闘機基地からなる大基地で、ユージアにおけるゼネラルの軍事 的な本拠地であった
ここを攻撃する意味は、ニューコムがゼネラルの重要拠点であるこの要塞をいかに簡単に攻撃できるかを見せつける、それが最大の目的だった
そして、雪花や上官のフィオナも、その中に加わっていた

『敵の迎撃部隊を確認しました、直ちに撃墜して下さい』

雪花はそれを聞くと、一気に加速して編隊の先頭に着いた、すぐに迎撃機の姿が現れて、同時にロックオンのアラートが鳴り響く
雪花は加速しながら上昇してミサイルをかわすと、そのまま反転して先ほどすれ違った戦闘機のバックを取って、機銃でそれを墜とした
火だるまになって地上に墜ちていく機体をよそ目に旋回すると、再び基地の方向に機種を向けた

『ワルキューレより全機へ、基地内では対空砲とミサイル、戦闘機とレーダー以外の目標に手を出さないで』

フィーの声がそう告げた、雪花は「了解」と言うと、手近のレーダーにロックオンして、ミサイルを発射した
爆発が起こり、山肌に作られた巨大なパラボラアンテナが吹き飛ぶ
雪花は高度を下げて山と山との峡谷地帯に滑り込むと、今度は機銃でマシンガンを破壊した、そのまま一気に台地のVTOL戦闘機基地の方に向かって行った

『雪花、高度下げ過ぎじゃないの?』

少し後方を、雪花より高い高度で飛んでいるフィーから通信が入った

「気にしない気にしない」

雪花はそう言うと、更に高度を300メートルまで下げた、この激しい山岳地帯の合間で、しかも2000キロを越えるスピードでだ
雪花とフィーはそのまましばらく飛んだ後、台地の寸前でほとんど垂直に上昇を始めた
たちまち、近くのマシンガンと高射砲の嵐が来たが、2機はそれぞれのデルフィナス#4をひねってそれをかわすと、今度は垂直に下降し始めた
眼下にVTOL基地と、離陸しようとしているゼネラルのVTOL戦闘機F/A-45"シュライク"が見えてきた
雪花はフィーはそれぞれ対地ミサイルを2発づつ発射すると、すぐに上昇に転じた
そして、背後で爆発が起こり、離陸しようとしていた戦闘機とヘリコプターは全て撃墜された

「やったぁ!!!」

雪花はそう叫ぶと、再びデルフィナスを旋回させて、今度は上空の戦闘機に狙いを定めた
爆音が、また一つとどろいた

30分も経っただろうか、既にVTOL基地や山頂の飛行場に待機していた戦闘機は全滅し、防空レーダーもほとんどが破壊され、潜水艦ドックも指定されたターゲットは全て破壊されていた
これだけの攻撃を行ったにもかかわらず、管制塔や基地内の民間のレーダー施設、兵舎や非武装の人がいるシェルターには一切の傷も付けないのは現代戦の特徴であろう
雪花とフィーはほとんど壊滅した潜水艦ドックの上を飛行していた、HUDには《NonTarget》と表示された黄色のカーソルしか見えなかった

「そろそろ終ね・・・・・・私たちも戻りましよ」
「サー・イエスサー」

雪花はふざけてキチッとした陸軍人の真似をして、フィーの後に続いた

「ン・・・・・・?」

ふと、雪花の視界に1機の戦闘機の姿が入った、なんとなくそれを目で追っていると、やがてその戦闘機は潜水艦ドッグの上空まで来て、ミサイルを非武装兵や兵士達の家族のいるシェルター目掛けて撃った
次の瞬間には爆発が起こって、シェルターが吹き飛んでいた
フィーと雪花はそれを見て、すぐに反転するとその戦闘機のバックを取った

『前方のNEU-AF所属R-103戦闘機に告ぐ、貴機が攻撃した目標は攻撃の許可が下りていない民間施設です、直ちに攻撃を中止し、帰還しなさい』

フィーが前方のR-103にロックオンした状態でそう告げた、雪花もロックオンした状態でそのまま飛び続ける だが、2機の前を飛んでいるR-103は進路を変えずに、再び攻撃に転じようとした

「ルシファ、攻撃開始します!」

雪花はそう叫ぶと、ミサイルを前方のR-103目掛けて放った
ミサイルはR-103のすぐ手前まで迫ったが、突然放たれた攪乱材によってかわされてしまった

『Dエンジェル、ミサイル発射!』

フィーの短いコールの直後、ミサイルが放たれたが、今度は急上昇で振り切られてしまった
雪花とフィーもその後に続いて上昇を始める、HUDにはしっかりとR-103の姿が映し出されていた

「今度こそ・・・・!」

雪花はそう言って機銃を撃ち始めた、フィーもミサイルを3発発射する
R-103は器用にそれをかわすと、更に上昇を続けた
高度が30000を越えたが、未だR-103は上昇を続けている
最新鋭機である雪花達のデルフィナス#4も、このまま上昇を続けるのは厳しい物があった
高出力のエンジンと磁力を利用したマグネッサーシステムと言う最新技術を搭載したデルフィナス4でも厳しいはずなのに、10年以上も前にロールアウトしたR-103は未だ上昇を続けていた、しかも、そのスピードか下がるどころか上がり続けている
やがて、見えなくなってしまった
雪花とフィーは力つきたかのように高度を下げて、10000で機体を水平にした

「アイツ・・・・・結局何だったの?」
『さぁ・・・・・・・・』

そう言いながら、2機はカルネアデスに向かって飛び去っていった

3日後 デニス空港 NEU総司令部

2人はそれぞれイスに腰掛けて、前に座っている5人の上官と対峙していた
2人とも今日は空軍の士官服を着ていて、フィーはポニーテールを解いて、雪花もバンダナを外していた

「フィオナ=C・フィッツジエラルド空軍中尉、飛鳥井雪花空軍少尉、キミ達が査問会に掛けられた理由はわかっているな」

中央に腰掛けていた男がそう言った

「わかっています、ですがあそこで起こったことは全て事実です、R-103戦闘機が私たちの目の前で非攻撃目標のシェルターを攻撃したのです」
「私もこの目ではっきりと見ました」

音腰手元の書類に目を落とした

「だが、R-103はその時の作戦には参加していなかったのだ、それに"カルネアデス"のレーダーにはキミ達の言う戦闘機らしい機影は見あたらなかった」
「ではガンカメラは?私の機体ならはっきりと写っていたはずです」
「調べては見たが、キミ達の機体のガンカメラからは、それらしき記録は見つからなかった」

雪花はそれを聞いて、立ち上がった

「嘘です!そんなはずはありません!」
「私からも証言します、確かにあの時あの場所でR-103が攻撃を行いました」
「口を慎み賜え!ここは査問会だ、我々を侮辱する発言は罪になるぞ」

雪花とフィーはそれを聞いて座り込んだ

「とにかく、その時の様子をもう一度聞こうか?」

数時間後、雪花とフィーは解放されて基地の食堂にいた

「結局、あの戦闘機は何が目的だったの?」
「さぁ・・・・・どっちにしても、あの戦闘機は行方不明のまま、査問会も解散したって」

フィーはそう言って紅茶をすすった

「でも・・・・・・・何か納得行かないし・・・・・」

雪花はそう言って食堂の壁に掛けられている大型のテレビを見た、アナウンサーがニューコムの戦闘機が民間人を攻撃したと報じていた

濱霧 緑炎さん
01.20.AM 更新