底なし宝箱

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Mission 8

複雑に入り組んだフィヨルド地形の中に、その施設はあった 天井が左右に展開して初めて姿を見せるハンガーと兼ねた滑走路、その周囲に作られた発電用の集光タワー、ユージア北東部、ペトロル沿岸のニューコムのテスト飛行場だ

その滑走路から飛び立つ戦闘機の姿を、岸壁に作られた展望フロアから見ている子供がいた
歳は5.6才、茶色の髪をした男の子だ
「クリス、どうしたの?」
クリスと呼ばれた少年は、その声の方に振り向いた
「明日は早くから訓練よ、もう部屋に戻りなさい・・・・・・」
その女性がそう言い終わらない内に、クリスはコフィンに身を沈めていた
そのまま曲芸飛行を行う、脇に開かれているホロ・ディスプレイからは《天才少年パイロット》と言う見出しでクリスの機が映し出されていた

『9年前のオレか・・・・・・・・・』

クリスはコフィンにいる幼い自分を見て、そう呟いた
そう呟いたと同時に、場面が映画のように一転して、今自分が乗っているデルフィナス#3と、見たことのないカタチの、黒い戦闘機が戦っているのが見えた
クリスのデルフィナスと敵の戦闘機は互いにバックを取り合っていたが、やがて、敵の戦闘機がクリスの機の背後に回り込んでミサイルを発射した
ミサイルはまっすぐクリスの機に向かって突き進んで、爆発した

クリスはそこで目を覚ました

「夢か・・・・・・・・・・」

そう呟くながら部屋を見回していると
エレクトロスフィアの端末が起動して、ネットフォンの着信を告げた
クリスは慌てて飛び起きて、キーボードを叩いた
同時に、マイクの顔がホロ・ディスプレイに映し出される

『大変だ!、今さっきクレッグとケインが墜ちたらしい!』
「嘘だろ・・・・」

クレッグもケインもSARFの隊長であるエリックの同期で、SARFでもエリックに引けを取らないエースだ
『この基地に向かってた輸送機を護衛してた時に襲撃喰らったらしい・・・ッたく、ついこの前ニューコムの誤爆事件があッたバッかだってのに・・・・・・・』

クリスがそこまで言ったとき、ネットフォンに割り込みが入った

「割り込んでゴメンな、出撃命令だ!」

割り込んできたのは、エリックだった

『既に先発隊が救出に向かったが、未だし遊撃した戦闘機が空域にいる上、この天候で未だ発見できないらしい、オレ達で何としても見つけるぞ、じゃあまた後でな』

その言葉と同時に、ネットフォンの画面が2つとも消えた
クリスはパイロットスーツを着込みながら急いで部屋を出た

「正夢じゃ・・・・・ないよな・・・・・」

そのつぶやきは、ハンガーのエンジン音にかき消された

土砂降りの雨の中、残ったSARFのメンバーはクレッグとケインが墜落した海域に到着した、既に数隻の艦艇が捜索していたが、成果は上がっていないようだった

『目標空域に到達、各機散開して捜索を開始しろ、なお敵戦闘機と遭遇した場合は攻撃してもかまわない』

エリックのその声と同時に、クリス、マイク、クレアの3人はそれぞれ別方向に散開していった
クリスは高度を500まで下げると、HUDに救難ビーコンのサインを示す画面を表示した

「反応無しか・・・・・・・」

その言葉通り、画面にはSARFのメンバーが発しているサインと、数隻の艦艇のサインしかなかった
クリスはデルフィナスをゆっくりと旋回させて、海面に目を光らせた

10分ほど過ぎただろうか、一瞬画面に反応が目えたように思えた
クリスは迷わず機首をその方向に向けると、一気にそのポイント目指して飛んでいった

『クリス・・・・・・クリスか?』

ノイズに混じってクレッグの声が無線から聞こえてきた、同時にサインが画面に表示される

「大丈夫か?!」

クリスはそう言いながら、デルフィナスを旋回させた

『ああ、残念ながら無事だ』

クレッグがそう言って、上空のクリスの機に向かって親指を突き上げるのが見えた

「"アルペン・ローゼ"へ、クレッグを見つけた、大至急収容を」

そう言い終わったと同時に、クレッグが話し始めた

『未だオレを堕とした戦闘機がいる、ヤツは相当のエースだ、気をつけろ』
「わかってる」

クリスはそう言うと、少し高度を上げて辺りを見回した
ほとんど同時に、レーダーが敵の接近を報せた

「出てきたな・・・・・・ちょっと追っ払ってくる」
『わかった、気をつけろよ』

クリスはその言葉を聴くと、一気に加速し始めた

すぐにHUDに機体が映し出されたが、カーソルの横に表示されるはずの機種が《UNKNOWN》となっているのだ

「正夢か?」

クリスがそう呟くと同時に、その戦闘機とすれ違った
その尾翼には、蒼い滝のマーク、清流公社のマークがあった
クリスは迷うことなく反転すると、その機体のバックを取った

「前方を飛行中の清流公社所属機へ、ここはUPEOの領空域であり貴機は領空侵犯を犯している、直ちに退去しない場合は攻撃を加える」

だが、前方の戦闘機は退去せずに、再びクリスのバックを取ってきた
クリスはアフターバーナーを全開にして一瞬距離を離すと、一気に機首をあげて来た
クリスが得意とする機動、"コブラ"だ
いつもならそれで、易々と相手のバックをとれるはずだった
だが、その戦闘機はクリスがバックを取った瞬間、全く同じ機動を取ってそのまま飛び始めた
クリスはすぐにアフターバーナーを点火して、その戦闘機から離れた

「嘘だろ・・・・・・・」

そう言うのが精一杯だった
相手の戦闘機はクリスの脇をすり抜けたあと、勢い上昇を始めた
クリスもあとに続く

厚い雲の層を抜けると、そこは月明かりが照らしていて夜とは思えないほど明るかった
クリスは素早くロックオンしてミサイルを発射したが、易々とかわされてしまった
クリスは間髪入れずにレーザー機銃で弾幕を張ったが、これも当たることはなかった

そのままネ一方的な空中戦が続き、クリスの中に焦りが生まれてきた

『このレベルが、UPEOの限界だな』

唐突に、敵戦闘機から通信が入った、クリスが答えようとしたときには既に撤退を初めていた
その直後、SARFのメンバーがその空域に集まってきた

(アイツ・・・・・・・何なんだ・・・・・・?)

濱霧 緑炎さん
01.20.AM 更新