底なし宝箱

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Mission 9

一機のデルフィナス#1が黒煙をふきながら墜落していた クリスはそのコフィンの中で必死になって機体を立て直そうとしていた 否、正確には幼い頃のクリスと言った方が正確だろう

《Warning ENSI system over
Rate critical point breakthrough of a synchronization》
(警告 ENSIシステムオーバー シンクロ率限界点突破)

HUDに警告文が浮かび上がると同時に、完全に制御が聴かなくなったデルフィナスは真っ逆様に墜落していった

「ッ・・・・・・・・・」

クリスは朦朧としている意識の中で脱出レバーを引いたが、カシャンッという音がするだけで何も起こらなかった 次の瞬間デルフィナスは海に突っ込んで、大きな水柱をあげた

クリスはそこで飛び起きた

「また夢か・・・・・・・・・」

そう呟くと同時に、激しい頭痛が襲った
昨日の戦闘が終わった直後から、時折こうして頭痛に襲われる事があった
よろける身体でどうにか起きあがると、そのまま医務室へと向かった

"このレベルが、UPEOの限界だな"

その言葉が、頭の中で繰り返されていた
クリスはその言葉を振り払うかのように軽く頭を振ると、重たい足取りで医務室に向かった

深夜だというのに、医師はイヤな顔一つしないでクリスの診断を始めた

「どうですか、クリス?」
「さっきよりは・・・・・収まりました」

クリスはヘッドセットにコードを繋げたような物をかけて、手の数カ所に吸盤式の心音などを調べるのとよく似た細いパットを付けたまま、医師の問いに答えた

「精神疲労ですね、無茶はいけませんよ」
「わかっては、いますけど・・・・」

クリスはそういてヘッドセットとパットを外した

「とりあえず、明日一杯は訓練を休むことですね、上には私の方から報告しておきます」
「お願いします」

クレスはそう言って、医務室を後にした

部屋に戻るとそのままベットに倒れ込んで、この前の戦闘のことを考えてみた
今まであんな敵と会ったことはなかった、しかも、あの敵は自分より数段上手であるケインやクレッグも倒したのだ
改めて、自分の無力さを思い知らせれたのだ

「このままじゃ・・・・・・ダメだよな・・・・・・・・」

翌日、クリスは寝不足で重たい足を引きずって、食堂にきた

「おはようって・・・・寝てないみたいだけど平気?・・・・」

そう言って、クレアがトレイを持ったままクリスに近寄ってきた

「平気じゃねーよ」

クリスはそう言ってトレイを手にして、列に並んだ

「不愛想ねぇ・・・・」

クレアはそう言うと、クリスの横に出てきた

「あんたがこの前戦った戦闘機だけど、どこのかわかったよ」
「どこのだよ?」
「Sシリーズ、それがその戦闘機の通称だって」
「Sシリーズ?」

クリスは聞き慣れない言葉を聞いて、クレアにオウム替えしに聞いた

「そ、清流公社製の戦闘機で、正式名称は"殲撃シリーズ"、アンタが戦ったのはS―54"オウカ"、でも識別コードは違うのだって」

クレアはそう言って話し始めた

「・・・・やたら詳しくねぇか」
「それが実の姉に言う言葉~?」

クリスはその言葉を無視して、トレイに自分の分の朝食を乗せた

「それより・・・・ケインとクレッグがどうなったか知ってるか?」
「あの2人・・・・結局パイロットとしては復帰できないって・・・・」
「そうか・・・・・・・・・・・・」
「元気だしなよ、新しい機体も来るんだし」

クレアは無理矢理明るい声を出すと、クリスの肩をぽんっと叩いた

その数時間後、クリスはハンガーに運び込まれた戦闘機を見上げていた
美しいまでに漆黒に染め上げられ、ゼネラル、ニューコムのどちらともつかないデザイン
未だ塗装が終わっていないのか、その尾翼にはL.M.F.のロゴと月のマークがあった
YF-23A"グレイゴースト"、ユージア中央部の都市国家"ロスカナス"で開発された新型の戦闘機だ

「これが・・・・新型か・・・」

クリスはグレイゴーストを見上げたまま、そう呟いた

「この間の戦闘で上層部も考え直したみたいですよ、クリス君」

唐突に、後ろから声を掛けられた
クリスが振り返ると、そこには紺色の髪をした東洋系の女性が佇んでいた、その胸にはロスカナスの民間軍"L.M.F."の技術三佐(少佐)のバッチがあった

「初めまして、私は北真玲名、ロスカナスの技術者です」
「どーも・・・・」

クリスはそう言って一礼した

「そんな堅くならないで良いですよ」

レナはそう言ってYF-23を見上げた、クリスもそれに習う

「YF-23"グレイゴースト"、先月ロールアウトした新型機ですね」
「ええ」

レナはそれだけ言うと、クリスを見た

「この機体と、あなたの腕があればあの戦闘機にも勝てるはずよ」

クリスはそれを聴いて、レナを見た

「なんで・・・・そのコトを?」
「色々とね、私もあの戦闘機には興味があったから・・・・・・変な意味じゃなくて、一人の技術者としてですよ、それに・・・・・・あなたなら、本当の意味でこの機体を操れると思うから」
「どーゆー、コトですか?」

レナは話し始めた

「私も昔は戦闘機のパイロットで、映像やフライトレポートを見れば戦闘機の性能やパイロットの腕とか、大体わかるんだけど・・・・・」

レナは言葉を濁した

「あの戦闘機・・・・正確には "桜花"ッて言うんだけど、あのパイロットは並の腕じゃないわ」

並の腕じゃないと言った辺りから、レナの表情が真剣なそれになった

「今回は無傷で済んだけど、この次は無傷で済むかどうか・・・・」

クリスは黙って、しかし真剣に話を聞いていた

「このコフィンには私がデザインした新しいシステムを使っているの、レーダーもエンジンも今までのより強力なものに換装しているから性能も大分上がっているはずよ」

レナは言葉を切った

「後は・・・・コフィンを操るあなた次第だけど」
「大丈夫ですよ」

クリスはそう言って、レナと目を合わせた

「もしも無傷で済まされなくても、その時はその時でどうにかしますから」

クリスはそう言って、普通の少年のように笑って見せた
レナは一瞬呆気にとられたようだったが、すぐに微笑んで

「期待してますよ」

と言った
二人はその後少しの間言葉を交わして、それぞれの場所に帰っていった

UPEOのアーノルド代表が提唱した一時停戦協定を三企業が破棄したのは、これから数日後のコトだった

濱霧 緑炎さん
01.20.AM 更新