底なし宝箱

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One (2)

 『乗り心地はどうだ?』
 「やっぱ尾翼が無いとロールが安定しない。でもR-104に比べれば良い方か・・・」
青いテスト機は高速で砂漠上空を通常飛行
時折、軽く旋回やロールを試しつつ機体の機動性を確かめる
 「ロールの速度は申し分無いが・・・やはり水平飛行へ戻る時にブレる」
 『そこら辺はパイロットにカバーしてもらいますよ。ではプランBへ』
 「了解」
コントロールディスクの先端を開き赤いセーフティケースを弾くとボタンを押し込む
鈍い赤が点灯し彼の装着するヘッドギアに-All Fire system OK-の文字
コントロールディスクを元の姿に戻すと中・長距離汎用ミサイルが各2本ずつ蘇る
 『無人コントロールのアグレッサーヘリが4機。探し出して撃ち落してください』
 「了解」
返答と同時に2つの吸気口は求める様に口を開き、4つのノズルは吐き出すように口を細める
フラップの働きをしていた可変翼が前進し主翼の中に収まれば機体は更に速度を上げる
瞬く間に音速を越え、捕捉と同時にロールと旋回を掛け合わせた荒業で目標を射程内へ
ロックオンカーソルが重なると同時にウエポンベイが開きミサイルが切り離される
瞬時に点火し補助翼が展開すると放たれた機械の矢は廃棄予定のヘリを粉砕した
回避と旋回を兼ねて右上空へ進路をとり、100°の急上昇と共に機体のレーダーは付近の目標を全て捕捉していた

 「アグレッサー01沈黙、ロックオンから攻撃まで2.75」
 「アグレッサー02・04共に補足。機内レーダーはスペック通り動いています」
 「各数値は許容範囲内」
航空開発団に貸し出されたRE-704戦術偵察機の機内、所狭しと置かれたコンピューターが空域を数値化する
標的のヘリから送られてくる索敵レーダー波受信情報
アルファ01のヘッドギアから送られてくる視線情報と攻撃までの推移や時間
その1つ1つが今後の実験に役立つ事も有る
 「アグレッサー04が沈黙、2.27。1.24で近くのアグレッサー03も撃墜」
 「エンジン過熱警告、吸気口数値を修正」
 「地上レーダーによるアルファ1補足率は12.35」
 「アグレッサー02沈黙、2.57。全目標沈黙」
 「作戦開始から4'25」
 「機体にダメージ無し、オールグリーン」

 『alpha-one, This is N-CUP. You under my control.』(アルファ01、此方はN-CUP。此方の指揮下に入れ)
 「Rager, I under your control.」(了解、其方の指示に従います)
 『OK, Alpha-one. We execute plan C.
  You must do the training which lands at the aircraft carrier on the BALZ sea.』
 (OK、プランCを実行する。バルズ海にて着艦訓練を行なえ)
 「Rager, I goes to BALZ sea」(了解、バルズ海へ向います)

 ――バルズ海―――

 ―――NEUバルズ海艦隊所属空母 グーリッジ

 「アルファ01を補足、Fコード照合完了しました」
 『了解した、付近の機影に注意しろ』
 「了解」
ふぅ、と溜息を漏らしコントロール室を見回した
ニューコムの空母は構造的に職員スペースが少ない
その為か小さい室内で他のレーダー要員やソナー、それに水上レーダーと通信担当
自分の隣で暇そうにモニターを眺めるのがレーダー要員
彼は離着陸関係専門、簡単に言うならば離陸に必要な進路状況報告や着陸コースの指示
空港で言う管制官、例のテスト機が来るまで彼の自由時間は続く
 「いえ、UPEOではありません。恐らく艦隊に気づいたゼネラル艦かと・・・バーデン級です」
我々の後ろに背中を合わせる彼はソナー担当
空母、いや艦船において対応速度を要する魚雷を発見する部署でもある
先程から黄色い光点から目を離す事無く副艦長と対応を検討中と見た
 「繰り返す、貴艦は着陸進路を脅かしている。直ちに退去しろ・・・畜生、言葉も通じないのかよ。俗物が・・・」
更に我々の後方でソナーと板を挟んで向かい合うのが水上レーダー係
空母を取り囲むUPEOの護衛艦と口論を続けて30分、そろそろ本番が始まると言うのに止む気配は無い
 「だから、何度いえば分かるんだ。テメェの艦が邪魔なんだよ!早く移動しろよ、×××××め!」
遂には酷めのスラングまで飛び出したが、恐らく終わる事は無いだろう
そしてスラングの後方両サイドにヘッドセットを抑えているのが通信担当
空母に関係無い部署や遠距離、例えば本部・艦隊司令部・他所属の艦隊・他企業艦隊・他種基地
それらへの通信を担当、攻撃指令や作戦コードなども送られて来る重要な部署
1巡りした所でアルファ01の色が青へと変わった、それは、無線のONを示す
 『アルファ01よりグーリッジ、着艦許可求む』
 「着艦許可、横風が強いから気を付けろ」
普段は公用語で会話するものの最近の連中は形式でしか覚えない
なので普段の言葉で聞こえたら普段どおり返すのが暗黙の了解と言う奴だ
 『了解、着艦体制に入る』
そして担当が隣の彼へと引き渡される
 「ポイント確認、進路OK。低空で侵入、甲板は空けてあるから好きな所へ着陸しろ」

 「着陸進路よし。ガイドピーコン受信、進路視覚化正常、エアブレーキ作動、可変ON、ギアダウン」
テスト時に開発者は全ての性能を試したがる、それも1回のテスト飛行で
止めて欲しいと個人的意見を噛み締めつつも手はマニュアル通りに動いてく
飛行を一時的にオートにし両手で端から端まで整列したボタンを吟味し押していく作業
エアブレーキ作動と同時に機体上部と機体底部の一部が空気抵抗に抗うが如く飛び出す
可変ONと同時に収容されていた主翼の一部が広がり揚力を助ける
最後にギアダウンを指示して全ての警告ランプを確認する
点灯無し
 「システムオールグリーン」
コントロールディスクに手を置くと自動的にオート解除、着陸は全て手動で行なえとの御達し
じょじょに速度は落ちていくが可変翼の賜物で操縦自体に苦労は無い
そして白い大きな空母が近づいて

 ―――UPEO第2護衛艦隊所属イージス艦 フォーゲン・ワルツ

 「実験機護衛に、5隻のイージス艦とか」
同僚の哨戒員は高機能双眼鏡を構え視界にテスト機を捉えたのか倍率を上げた
 「どうだ?UPEO顧問評価員」
 「確かに低速にしては動きが軽い、高評価だ」
マニアに対する皮肉に彼は微笑みながら返した
それがマニア心から来る情報か皮肉に対するものか分からないが
 「どれどれ」
同じように双眼鏡を構える、この艦の位置は空母進行方向右手
丁度機首を上に向け減速&着艦体制、艦載機はワイヤーの関係から着陸態勢が露見する
そして、吹き上がる黒煙
 「何かのパフォーマンスか?」
 「新型の逆噴射かもしれない」
確かにと頷けるように機体は一気に速度をおとす
そして軽やかに着艦・・・・
 「「!!」」
したはずの機体が彼らへと迫っていた

 ―――NEUバルズ海艦隊所属空母 グーリッジ

↑と同時刻
甲板に出ていた空母の職員は目が飛び出さんばかりに驚きの顔を見せた
黒煙?そんな話は聞いて無い!
設計に関わった開発室の職員の驚きようと言ったら展示出来る程の物だった
ムンクの叫びなど足元にも及ばない形相をした彼
そして彼の目の前で体制を崩した機体は右主翼から着陸、もはや着陸とは言わない
墜落である
そのまま乗員達の頭上を爆音と破片と爆風を伴い、甲板で弾んだ大きな青い機体は揚力を頼りに浮かび続けた
そして機体はUPEO艦へ
艦橋下の通路を削りながら飛行を続け速射砲に頭から突入、垂直発射装置の上で力尽きると壊れかけの翼を乱暴気味に休ませる
そして新たな爆炎
速射砲が鼓膜に付き刺さる爆音と共に夜空へと舞い上がる
飛んで、飛んで、飛んで、飛んで、飛んで、飛んで
回るシステムが無い巨大な塊は垂直落下、暗い海面に巨大で華麗でエンターテイメントの匂いがする水柱は暫し彼らを魅了した
そして時が止まる事数秒、彼らの沈黙は警報と同時にスリープ状態から元へと戻される

 『全艦へ通達!不振な小型艇がテスト機へ攻撃を行なった!直ちに小型艇を補足、乗組員を拘束せよ!』

CAN電池さん
01.20.AM 更新