底なし宝箱

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One (3)

 ―――UPEO第2護衛艦隊所属イージス艦 フォーゲン・ワルツ

 「全部署に点呼命令!クルーの確認を急げ!」
 「はっ、はい・・・『ブリッジより各班。クルーの点呼、状況を報告せよ!』」
艦内放送が流れると同時に機関は緊急停止、ブリッジは上へ下への大騒ぎ
 「ベルセード・トヨタより追撃命令!」
 「放置だ!放置」
通信室からは報告と命令、そして情報を一つ一つ処理しながらブリッジのガラスに顔を押し付ける艦長
火災は起きていない、被害は右舷通路と速射砲
万が一の場合、垂直発射管も怪しい
 「全兵装のセーフティ確認、最優先事項だ!」

墜落地点は「おい」と「なんだ?」と「大丈夫か?」の合唱
一斉に墜落機体に飛びかかり各時の武器でコクピットを抉じ開けようとする
それでも機銃からパイロットを守る装甲は人の手で剥がすには難しい
 「さがってろ!」
続々と応援が駆けつけ人では増す一方、船医も既に待機し担架が立て掛けられている
応援第一陣、斧
緊急用、人間レベルでの破壊活動において利用される斧 それがコクピットの隙間へと振り下ろされる―――効果無し
 「駄目か!」
 「コッチに任せろ!」
応援第二陣、レーザーカッター
緊急用、斧は扉などの破壊だが此方は壁などの破壊
照射と同時に赤い光が装甲板を融解させていく―――効果無し(時間切れ)
だが目につかないような小さなハッチが融解の圧力に負けて弾かれる様にオープン
 「パネルだ、数値入力用!」
 「まてまてまてまて・・・・」
大慌てで試験担当官が作戦要項の緊急事態対処マニュアルのパイロット項目を洗っていく
 「・・・54UGT72A65だ」
素早く打ち込まれる開放用コード、同時に今まで彼らを拒んでいたハッチが大きく口を開けた
慌ててクルー達が離れるとハッチが解放される、そこには人が十分入れる程のスペース
第2装甲板も開かれるとコクピットの中から手袋に身を包んだ右手が姿を現す
そして左手が姿を現せ両腕がハッチを掴むと、上体が腕力に頼りながら姿を見せる
上体をハッチからサルベージすると体をハッチ横へと転がした、2回目で体が止まると大の字で沈黙
両腕が顔を隠すヘッドセットを外し投げ捨てた、黒髪の映える20代の男性
 「おい、大丈夫か?」
駆け寄る船医と様子を見守るクルー達、さながらドラマのワンシーン
 「名前は?所属とか・・・・」
 「・・・・NEU・・・第1・・テスト小隊所属・・・リュック・・ハーヴェイ・・・少尉」

 ―――NEUバルズ海艦隊所属空母 グーリッジ

 「内火艇下ろせ!使える所だけでいいからヘリを上げろ!」
即座に甲板下の一体収容型の内火艇が下ろされ海兵隊員が乗り込む
先程、死にそうな程の慌てっぷりを披露していた開発室職員も「早く出せ!」と騒ぎ立てる
同時進行で傷ついていないエリアにR-305多目的空母ヘリが引っ張り出されローターを回す
必要最低限の海兵隊員が乗り込むと計器のチェックも終え舞い上がって行く
各艦から発射され続ける拡散照明弾に照らされながら

 ―――UPEO第2護衛艦隊所属イージス艦 ジューリア・マツダ・フォーミュラ

 「フォーゲンの様子は?」
 「恐らく動けないでしょう、後処理が」
 「ニューコムの内火艇が接近!」
ブリッジの艦長以下首脳陣全員が前方の僚艦の様子を伺う
照明弾の微かな明かりの元で黒煙が上っていく
 「水上レーダーに不明艦!方位3-4-0、我が艦とフォーゲンの間を抜けます!」
報告と同時に全員が同じ動作を同じタイミングで規律正しく行なわれる
双眼鏡の先が巨大な見方艦から照明弾に照らされた小さな小型艇へ
小さい、レジャー用のクルーザーよりも高速小型艇に近い
 「全速前進、面舵15!進路を塞げ!」
 「全速前進、面舵15!」
待機していたエネルギーユニットが始動、運動がタービンへと伝わり2本のスクリューが回転を始める
衝突を避けるために右へと進路を取ながらフォーゲンとの距離を詰めていく
しかし、そこは船の大きさや加速性
小型艇が隙間を付いて外洋へと抜ける、先にはUSEA大陸
 「クソッ!面舵75!逃がすなよ」
 「面舵75!」
巨大な船体は右へと傾きながら海面を切り裂いていった

 ―――UPEO第2護衛艦隊所属イージス艦 ベルセード・トヨタ

 「ジューリアが追撃を始めました」
 「G・S・フォードも追撃を開始。リューベリング・クライスラーから艦載機が離艦、追撃を始めました」
 「ここからじゃ、船では無理だな」
残念ながら艦首の方向が検討違いのベルセード、追撃しても小型艇に敵うまい
 「我が艦も直ちにV-26を離艦させろ」
 「了解」

 ―――UPEO第2護衛艦隊所属イージス艦 ジューリア・マツダ・フォーミュラ

 「現在45ノット、距離2340」
 「後1200で進入禁止エリアです!」
 「・・・・取り舵一杯、巡航速度を維持しろ。・・・本隊へ戻る、それから・・・」
一度だけ小さな小型艇を確認すると防弾仕様のガラスを拳で叩いた
 「沿岸警備隊に通報しろ」

 ―――沿岸警備隊南部方面隊所属 V-49水陸両用型

 『本部より7号機、8号機。 UPEOより入電、南部より小型艇が接近中。目標は強力な火力で武装との事。
  全力で目標を停止させろ。場合によっては発砲・撃沈を許可する』
 「おい、起きろ!」
パイロットの男が隣の女を叩き起こす、眠そうな目を擦りながらもシートを起こし無線を開く
 「こちら7号機、了解」
女が確認を返している間にパイロットの男は離陸準備に入る
V-49はクォッド・ティルトローターを採用し4つのローターに囲まれた巨大な機体は沿岸警備隊用に着水可能
その巨体故に始動時間が掛かるものの近年悪質化しつつある海賊の強力兵装へ対抗できる
即座にエンジン始動、4つのローターが互いに調整しながら回転を始め4つの波紋
徐々に、徐々に回転数が上がり、離陸可能な回転数まで持っていく
 「機体のエラーは?」
 「ありません」
 「エンジンシステム」
 「エラー無し」
 「よし、離水する」
スロットルを奥まで押し込みエンジン音が更に甲高い音を響かせていく
そのQuartettが極限まで達すれば機体は海面から離れ、独自の力だけで空に漂う
 「レーダーに影、恐らく目標かと・・・・」
 「追跡する」
機体を傾け針路変更しつつ低空で目標を探す、だが未だ日は上っていない
ヘルメットの暗視装置を下ろすと再び海面を見回す
標識灯、それじゃ無くても不規則な海面でも見つければ
 「左舷、小型艇!」
女性の声と共に操縦桿を倒す、それだけで機体は自動的に姿勢を制御し各エンジンを調整していく
ローターが前へ倒れていくだけ速度は上がり安定性は増していく、ヘリ以上飛行機以下の速度が出る機体
あっという間に追い着くと照明を小型艇に向ける、暗視装置を上げると照明を頼りに小型艇に迫るのみ
 「沿岸警備隊だ!直ちに停船せよ!直ちに停船せよ」
 「後方より8号機」
 「捕まれ!」
二人の声が重なった。機体の急旋回で女性は振り回され、白煙を伴う何かが機体をかすめる様に上昇する
 「!!」
見間違える事の無い物体は上空で爆発する、その明かりに照らされる2人の乗組員と彼らの構えた武器
 「対戦車ロケット!」
 「7号機より8号機、沈めるぞ!左後方へ進入せよ」
 『8号機、了解』
8号機が前進し7号機は小型艇に並ぶ
 「銃座ダウン、セーフティ解除」
隣の彼女に電子照準機が下りてくる、顔を合わせると小さな操作レバーを握り細かく揺らす
 「撃て!」
命令と同時に2機の銃座から高速貫通弾が放たれ続ける。銃声とマズルフラッシュが暗闇に咲く
水面に立つ小さな水柱の中を小型艇が走り続ける、だが銃撃は止まらない
毎分1200発を撃ち続ける特性のマシンガン、照準は電子システムを使用した間接的操作
銃声、銃声、銃声、銃声、銃声、銃声、銃声
そして締め切る様に小型艇は沈んでいく、それでも銃声は止まらず貫通用の弾丸が海面を荒らす
銃声、銃声、銃声、銃声、銃声、銃声、銃声
やがて、沈黙。あれだけ食らえば護衛艦とて唯では済まないはずだ
ボートは沈んでいく、泡を立てながら徐々に、徐々に
2機は射撃可能範囲から逃さぬように機体を制御しつつ沈没地点を大きく旋回
やがてホバリングに入った2機の照明の中で小型艇は姿を消した

 「・・・・本部に報告、小型艇を撃沈したとな」

CAN電池さん
01.20.AM 更新