底なし宝箱

[top]   [story]   [short story]   [present]   [diary]   [offline]   [links]   [bbs]

| [トップページ] | [CAN電池さんトップ] |

One (4)

 ―――サウスセントラル病院

広い病室に白いベッドは一つだけ、特別病室の中で彼がベッドの上で体を起こしたまま待っていた
ベッドを取り囲むように並べられたワイドスクリーン4台、彼を中心に4分の1を占拠したモニター
そして彼の視界へ一斉に白い制服の男達が一列へ並ぶ、モニターの向こうだが
彼は彼に向けられたカメラへと静かに敬礼する
 『所属と官制名を』
ニューコムの首脳陣に加え、NEUの指揮・運営を管理する中央指揮所の偉いさん連中
 「NEU第1テスト小隊所属、リュック・ハーヴェイ少尉です」
モニター越しとは言え集まる視線、重役室にありがちな重たい雰囲気と嫌な空気
映像はリアルタイムで本部の調査委員会とスフィアを通じてリンクしている
 「当日は何を?」
事故から既に3日、徐々に各部署の原因究明機関が動き出す
ニューコムは勿論、UPEOにゼネラルまでもが各自の調査機関をフルに動かしまくってる
 「0800テストを兼ねた離陸、0830空中機動・火器管制テスト、1150グーリッジにおける着艦テスト」
事実、これも調査の一環な訳で
 「事故直後、操作の不備は?」
 「いいえ、指示通りの手順を実行しました」
 「その時、何かしらのトラブルは?」
 「空中機動実験中に一部を変更したと聞きました」
 「それは飛行に影響を?」
 「ほとんど有りません」
 「敵の攻撃を察知することは?」
 「レーダーに反応はありませんでした」
 「視認できたか?」
 「暗視装置を着用しておりませんでした」
 「敵の攻撃を回避する事は?」
 「察知・探知出来ない以上は・・・・」

 「おいおいおいおい。どうしたんだよ、リュック」
機材の撤去が済んだ病室の中、暇と空間をもてあます彼の病室に一人の中年男性
右に菓子箱、左にサッカーボールの箱を抱えた細めの男は荷物を置くと近くの椅子に腰を下ろした
 「すいません、小隊長」
小隊長と呼ばれたテスト班・第一テスト小隊(戦闘機専門)のアーク小隊長は微笑みながら右手をあげた
 「全くだ、この忙しい時期にエリートを失うとは」
いやはやと呆れながらも微笑は絶やさない通称『和みさん』はポンとベッドの上に資料を落とす
 「情報部のアーケリスからのお土産らしい、事故の調査記録だよ。知り合いか?」
 「士官学校の同期です」
目も通さずに棚の引き出しへ入れる、勿論極秘扱いではあるが
 「俺は実働派じゃ無いから良く分からんが・・・今回の事件は・・・」
 「えぇ、機体のレーダーに警告が・・」
待て待てとアークはリュックに黙れの人差し指
 「・・・・・その為のサッカーボールだ、大事に活用しろ」
近くの未開封サッカーボールを手に取り同じようにベッドの上へと下ろす
それだけ残すとアークは立ち上がり早々に出口へと向う、彼の口癖は「忙しくてね」だったりする
 「ありがとうございました」
軽く手を振ると彼は視界から消えた

 『・・・に付いてUPEOは使用されたと思われる武器を公表しました』
病院の夜は恐ろしいほどの静寂と闇に襲われる、が彼の部屋だけはテレビが映っていた
 『公表された武器はゼネラル製の携帯可能な対空ミサイルで安価・威力などからテロリストなどが多くもちいられ・・・』
闇夜の中でテレビの明かりだけが室内を照らす、その中でリュックはサッカーボールを取り出した
ついでに果物用ナイフを手に取りカバーを排除
 『2054年のゼネラル旅客機撃墜未遂テロなどに用いられ・・・』
サッカーボールを一閃、そうすればサッカーボールの様に見えた物が普通のゴムボールだと言う事に気づく
そして中に隠された黒い物体
静かに取り出すと半分だけスライドさせチャンバー内の銃弾を確認する、心地よい機械音と共にスライドを戻す
ハンマーを下ろしセーフティを施すと一度だけ構える
手を下に添えるとか、軽く当てるだけとか嘘にしか聞こえない。片手は銃姿勢の維持もしくはライト&防御
それだけ確認すると再び引き出しへ、極秘書類と同じ所へ

 ―――沿岸警備隊南部方面隊

 「有り得ません!アレは間違いなく対戦車ロケットです」
詰寄る男と逃げる男
 「現場にいた貴様が言うのだから、そうなのだろうよ。しかしな・・・」
 「しかし?」
上司の男は止めをさす
 「上がアレと言ったらアレなんだよ。それが組織と言うものだ、特にUPEOみたいな組織はな」
乱暴に閉じられる扉、そして残される男
 「くそっ!」
で、そこに現れる一人の女性、白く長い髪を揺らし黒いスーツの女性は歩いて来る
そして掲げる黒いバッジ
 「今の話、詳しく聞かせてもらえ無いかしら?」

 ―――UPEO本部

 「・・・・」
UPEO本部の倉庫Bに続く狭い通路にリュックはいた。腰には病院で受け取ったニューコム制式採用のNP52
オートマチック可能な装弾数35のサブマシンガン並の拳銃、それをホルダーに付け隠す様子も無い
そして近づく入り口には2名の警備員、だが敬礼だけで普通にパス出来たりする
勿論、彼の着込んだ保安員の制服と完璧に偽造された身分証明書の賜物でも有るのだが
入室して確認する事なく一つの小部屋へ、ここへ運ばれた事は既にUPEO書類の盗み見で確認済
泥棒並の身の軽さで侵入すると扉を閉め置かれた黒い筒を視認する
公的機関にありがちだが警備の不十分さに感謝しながらも黒い筒を構えた
そして電源を入れる、内蔵された高性能レーダーが作動しスクリーンに捕捉サイトが現れる
対空兵器と言えば敵機を捉えるために馬鹿高い性能のレーダーを必要とし、対抗兵器はレーダー波を逆に利用する
それが正常に動く、正常に動いてしまう
確かに値段に見合った以上の性能は期待できる
期待出来るが・・・・


 「動かないで!・・・今すぐソレを戻しなさい!」

CAN電池さん
01.20.AM 更新