底なし宝箱

[top]   [story]   [short story]   [present]   [diary]   [offline]   [links]   [bbs]

| [トップページ] | [CAN電池さんトップ] |

One (8)

 ―――セクトファーリア42

USEAの南東部に位置する普通の都市、UPEO本部に程近い所為か人口は多め
だが、それを除けば他の町とは大差が無いほどの普通の町、時は既に0時を回り住宅街は静まり返えっている
夜遅くまで明かりが絶え無い繁華街とは正反対に住宅地は完全な静に包まれ夜独特の雰囲気が流れる
この時間はゼネラルもニューコムもUPEO夜組と昼組の交代が終わる時間で一日の間で一番静かな時間なのだ
先の企業紛争時には両社の職員を並ばせて生活させるなど不可能な事、それほど両社の関係は悪かったのだ
だが<社外無関係宣言>、つまり仕事以外なら企業は関係有りませんよ的な取り決めが出来てから町は一変
両社が入り乱れ、より快適な、より自分好みな土地を求める様になった
人口が集まり、資本主義が飛びつき、更に町は栄えていく
その典型的なパターンがセクトファーリアでもある
UPEO本部から風に乗ってやってくる微小のエンジン音が付き抜ける中、シルバーの高級スポーツカーは街中を徐行する
セクトファーリアは全体的に中流階級的な住宅街、金持ちが道楽で乗りまわすような車を目にする機会は無い
見つかれば話題を巻き起こす事確実のソレは音を気にしている様子で先に進んでいく
一つ一つの住所を確認しながら進んでいく小さく高機動な車体、ある程度進んだ所でテールライトを灯し停車する
とある普通の住宅の前で

先に説明した通りにセクトファーリアにはニューコム社員もゼネラル社員も生活している
事実、深夜に鳴らされたインターホンに対応するため玄関へと向う彼女はニューコムに所属しているわけで
深夜0時を過ぎ一般的な客人は訪問を控えるものだが、事実インターホンは鳴ったのだ
ならば・・・
 「ったく。いい加減にしてよ、父さん」
愚痴を溢しながらも電子ロックを解除し玄関に立つ人影へと顔を向けた
 「悪いが・・・・君の父さんではないぞ」
視界に入ってきたのは彼女の父と比べるのも失礼な黒髪の若い男、詳しく知っている訳では無いが知らない人でも無い
 「少尉でしたか」
リュック・ハーヴェイ少尉、最近顔を合わせ詳しくは知らないが名前ぐらいなら覚えている
 「オフなんだから階級は止めてくれ。それと・・・・」
困惑を両手のジェスチャーで見事に表現しながら彼女の上から下まで見通して口を開く
 「出来れば下着以外で出てきてくれないか?」

 「それにしても、今日は何の用で?」
上下共に一般的な衣服を着用しコーヒーを出しながら客人であるリュックに聞いた
 「出撃前に約束したもの。渡そうと思ってね」
取り出したのは黒い板切れ、通称メディア
捕捉としてスマートは販売用に用いられる特別な記憶媒体、数年前までスマートをメディアで保存するが主流だった
が近年になりスフィアを経由するモバイル(携帯可能な多目的情報端末)が普及しメディア・スマートは姿を消した
メディアは最高の音質と長期保存や消失防止などで極一部では使用者も居るが限りなくゼロに近い
 「あ・・・ありがとうございます。わざわざ、届けに来なくても」
と言いつつディスクを確認し近くの戸棚に放り込む
 「それと、一つ頼み事があってね・・・」
 「頼み事・・・ですか?」
あぁとリュックは頷き彼女は疑問に首を傾げる
 「これだ、これの解析をしたいんだ」
別に先に出した物と大差無いメディアなのだが
 「どうやら再生方法が特殊でね・・・君の家の一式を貸して欲しい」

 『先程、ゼネラルの兵器部門に対する一斉立ち入り調査が始まりました。
アンガーUPEO代表議員は記者会見の席で今回の立ち入り調査についての公式な・・・・・」

 「もしもし?」
本部の駐車場に凹んだ車を戻して地下駐車場から上へ向うためのエレベーターに乗り込む、正にその時だった
モバイルが鳴りだし着信の表示
 『俺だ、リュックだ』
相手はニューコムのテストパイロット(と聞いた)のリュック、そして受話器越しに聞こえる微かな誰かの声
 「あぁ、どうだった」
 『親切な友人の好意で何とか解析できた、いつでも確認出来るぞ』
 「・・・なら私のモバイルに転送して、アドレスはUuseanet-U-headliner-485246D」
 『了解した』

会話を終了したと同時に再びモバイルの呼び出し音が鳴る、最初に出たウィルス警告メッセージをキャンセル
データ受信確認をイエスにし、モバイルは送られてきたデータを本体の中へと蓄積させていく
動くのはソレが終わってからだが・・・

 「対象Aが証拠を掴んだと・・・」
 『・・・・・確証は?』
 「有りません・・・・が可能性は十分にあります」
 『なら・・・今すぐ拘束しろ!絶対に外に漏らすな!』
 「了解しました」

 「エリカ・フェリス少尉ですね?」
と、影から現れたのは黒服の男一人
幸いサングラスも銃も持っていないようだが<こいつはヤバイぞ感>が強い
 「申し訳有りませんが御同行願います」
 「拒否・・・したら?」
よく考えれば分かる事だが、なぜ男達が彼女の帰還ルートを知っているのか?
 「申し訳有りませんがUSEA憲章77条により身柄を拘束する事になります」
 「そう・・・」
 「貴様ら!やっと見つけたぞ!」
と彼らの会話を壊すかの如く突入して来たのが警備員AとB、ちなみに今回はCからJまで
エレベーターから姿を現した彼らはエレベーターを囲むガラス板の向こうから走ってくる
焦る黒服男と更に姿を現す特殊兵装の男達A'からF'、レーザーポインターが右往左往に駆け巡り響く銃声
だが伊達にUPEOの本部ではない、放たれた弾丸は強化ガラスに阻まれ傷が付く程度
 「くそっ、撃ち返せ!」
警報が鳴り響き自動ドアが閉ざされる、それを強引に押し開く警備員陣
さらにエレベーターは上下運動を続け続々と応援が到着する
そして銃撃戦の始まり・始まり
 「何考えてるの!」
と慌てているのは取り残されたユリカさん、慌てて物影に隠れると弾丸が四角い柱を削る
慌てて取り出したるは彼女のモバイル、説明も特に不必要な感じだが無人の黒(凸凹)セダンがコーナーを駆け抜けた
彼女の付近で急停止、遠隔操作で後部座席の窓を開かせると隙を見計らって飛び込む
窓が閉ざされていくのと同時進行で車は急加速し地下駐車場から飛び出していく
それを見逃すような男達では無い
 「警備員は無視しろ。あの女が優先だ!」
命令が行き渡ると特殊部隊風の男達は後退を始め、各自の車両へと分乗し追撃を開始
警備員達に発砲を続けながらも黒い高級車陣は地下駐車場より脱出を計る
出入り口へ先回りした警備員の弾丸を弾き返しながら黒の集団は目標を追う様に外へ
彼女、二日連続(時間差約3時間)のカーチェイスが幕を開けた

CAN電池さん
01.20.AM 更新